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福井地方裁判所 平成11年(行ウ)19号 判決 2000年6月28日

主文

一  被告が平成一一年九月三日に原告に対してした別紙文書目録記載の文書の非開示処分を取り消す。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

主文同旨

第二事案の概要

本件は、原告が、被告に対し、福井県公文書公開条例(以下「条例」という。)に基づいて公開を請求した「整理台帳」(「不適切な事務処理方法により取得した備品」を記帳した管理簿)について、被告のした公開の可否を決定できない旨の通知(非公開の処分)の取消しを求めた事案である。

一  前提事実(争いのない事実以外は末尾に証拠を掲記した。)

1  原告は、福井県の住民であり、条例五条に定める公文書公開請求権者である。

被告は、条例二条三項に定める実施機関である。

2  原告は、平成一一年八月二〇日、被告に対し、別紙文書目録記載の文書(以下「本件文書」という。)の公開を請求した。

3  被告は、同年九月三日付けで、原告に対し、「公文書公開請求について(回答)」をもって、右請求にかかる公文書は存在しないとの理由で、公開の可否を決定できない旨の通知(以下「本件回答」という。)をした。

4  本件文書は、福井県知事部局の各所属において、「不適切な事務処理方法により取得した備品」の存在を管理するために作成されたものであり、一連の番号、品名等及び数量が記載されている。また、「不適切な事務処理方法により取得した備品」も、公務遂行の用に供されるものとして、県の財産として管理されており、本件文書も各所属において管理されている。

5  右にいう「不適切な事務処理方法により取得した備品」とは、次のものをいう。すなわち、福井県の旅費調査委員会は、平成六年度から平成八年度まで及び平成九年度の一二月までの福井県知事部局等の全所属における旅費支出を調査した結果、適正な執行と確認することができないものをとりまとめ、「旅費調査結果と改善方策に関する報告書」において、適正な旅費支出の執行と確認することができないものを「事務処理上不適切な支出」とした上で、これを、備品の購入等に充てられた「公務遂行上の経費」と、これに当たらない「不適切な支出」とに分けた。「不適切な事務処理方法により取得した備品」とは、右のうち「公務遂行上の経費」により購入された備品をいう。

6  福井県においては、正規に備品を購入しようとする場合には、福井県財務規則(昭和三九年福井県規則第一一号。以下「財務規則」という。)二三条により執行伺及び支出負担行為伺を起案し決裁を受けることが、備品の購入代金の支出においては、財務規則六六条により支出命令決議書を起案し決裁を受けることがそれぞれ必要であり、更に、購入した備品については、財務規則二三七条の二により、右支出負担行為伺及び支出命令決議書等に基づき、中分類、小分類、品目、規格、年月日、出納の種類(購入、寄付、保管転換、売払、廃棄等)、番号、受(数量、単価、価格)、払(数量、単価、価格)、差引現在高(数量、単価、価格)、内訳等を記載した備品台帳を作成しなければならない(乙4、弁論の全趣旨)。そして、右備品台帳は、条例二条一項の「公文書」、すなわち「実施機関の職員が職務上作成または取得をした文書(中略)であって、決裁または供覧の手続終了後、県において管理されているもの」に該当する(弁論の全趣旨)。

二  争点

1  本件回答は行政事件訴訟法三条二項の「処分」に該当するか(本案前の争点)。

(被告の主張)

(一) 条例九条は、「実施機関は、第六条第一項の請求書の提出があったときは、速やかに、当該請求に係る公文書の公開の可否の決定をしなければならない。」旨規定しているが、公文書公開請求が条例上不適法な場合は、同条に基づく公開の可否の決定を行うことはできない。

原告は、本件文書につき公文書の公開請求をしたが、当該請求は、条例二条一項に定める公文書に該当しない文書の公開を求めるという不適法な請求であったため、条例九条による公開の可否の決定ができないことから、本件回答を通知したものである。

(二) 行政事件訴訟法三条二項の「処分」とは、行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうところ、本件回答は、条例九条一項に基づき公開の可否の決定を行い、一〇条一項に基づき通知したものではなく、二条一項の「公文書」が存在しない事実を通知したものであり、事実行為である上、これに審査請求等の特別の不服審査手続を認める規定もないから、右にいう「処分」には該当しない。

したがって、本件訴えは、不適法である。

(原告の主張)

条例は、「公文書の公開に係る県民の権利」(一条)、「公文書の公開を請求する権利」(三条)を保障し、「実施機関は、第六条第一項の請求書の提出があったときは、速やかに、当該請求に係る公文書の公開の可否の決定をしなければならない。」(九条)と規定しているから、公文書公開請求に対しては公開の処分か非公開の処分しかあり得ない。そうすると、本件回答は、原告の公開請求に係る公文書を公開しない意図を明らかにしているのであるから、本件回答は非公開の処分というべきであり、行政事件訴訟法三条二項の「処分」に該当する。

実質的にみても、本件回答を単なる事実の通知と解し、処分ではないとすることは、請求に係る公文書が存在するか否かの点についての司法判断の機会が保障されないことになり、条例の実施機関は請求に係る公文書が存在しないと言えば自由に情報公開を拒否することができることになってしまい、県民の情報公開請求権を保障した条例の趣旨に反する。

「公文書が存在しない」場合にも、物理的に文書が存在しない場合と、公文書の要件に該当しない場合の二種類があるのであり、少なくとも後者の場合は条例の解釈に関わる問題であるから、司法審査に付されるべきである。

したがって、本件訴えは適法である。

2  本件文書は条例二条一項の「公文書」に該当するか。

(原告の主張)

(一) 本件文書は、条例二条一項の「公文書」の要件である「実施機関の職員が職務上作成または取得をした」ものであること、「決裁または供覧の手続終了後」であること、及び「県において管理されているもの」であること、といういずれの要件をも満たす。すなわち、

(二) 「職務上作成または取得をした」とは、実施機関の職員が自己の職務の範囲内において、事実上作成し、または取得した場合をいうものと解すべきであり、福井県文書規程(昭和六一年福井県訓令第六号。以下「文書規程」という。)に基づいて作成取得されたか否かは問わないと解するべきである。

次に、「決裁または供覧の手続終了後」とは、福井県の事務において通常行われている文書作成手続を意味するにすぎないというべきであるから、文書規程に基づいて作成される文書だけではなく、事務の性質、内容により、あるいは慣例的に文書規程に基づかずに作成されている文書であっても、当該事務において通常行われている文書作成方法であれば、「決裁」等を経た文書というべきである。

また、「県において管理されているもの」とは、実施機関が現実にこれを支配状態に置いていることをいい、管理権限の所在する者が管理することは要しないというべきである。

(三) これを本件文書についてみると、本件文書は、「不適切な事務処理方法により取得した備品」の管理のために作成されたものとはいえ、これらの備品も県の財産として管理されている以上、本来は物品管理者が備え置くべき備品台帳に代わる文書としての性質を有するのであり、各所属において、「不適切な事務処理方法により取得した備品」の存在を管理するために、一連の番号、品名及び数量を記載して作成されたものであるから、本件文書は、実施機関である被告が職務上作成し保管する文書であり、かつ、被告が現実にこれを支配状態に置いているということができる。また、各所属においては、「不適切な事務処理方法により取得した備品」について、本件文書に所定事項を記載することが一般的な管理手続として承認されていたといえ、したがって、本件文書は、「不適切な事務処理方法により取得した備品」の管理のために通常作成される文書であるから、「決裁」等を経た文書との要件を満たすというべきである。

そもそも、「不適切な事務処理方法により取得した備品」であっても、公金で取得する財産である以上、本来は正規の「公文書」である備品台帳に登記されるべきものであるにもかかわらず、備品台帳を作成せずに本件文書を作成したのは、意図的に正規の備品取得手続以外の方法により備品を取得したものにすぎず、また、条例による公開の対象としないためにあえて「決裁」等を経ない処理をしたものというほかないから、被告が、「決裁」等を経ていないことを理由に本件文書が「公文書」ではないと主張することは、行政上の信義則に反して許さない。

(被告の主張)

(一) 本件文書は、条例二条一項の「公文書」の要件のうち、「実施機関の職員が職務上作成または取得をした」ものであること、「決裁または供覧の手続終了後」であること、及び「県において管理されているもの」であることの各要件を満たさないから、右にいう「公文書」には該当しない。すなわち、

(二) 「職務上作成または取得をした」とは、実施機関の権限に属する事務の執行に当たって、文書規程に基づき、起案(県としての意思を決定するために、その基礎となる案文を作成すること)又は収受を行うことをいい、「決裁」とは、文書規程及び福井県事務決裁規程(昭和五〇年福井県訓令第三号。以下「事務決裁規程」という。)等に基づき、事案についての意思を決定することを、「供覧」とは、文書規程に基づき、関係者の閲覧に供することをいい、「県において管理されているもの」とは、文書規程等に基づき、県の機関が保管、保存しているもの(ただし、文書規程等に基づく廃棄の決定手続が行われたものは含まない。)をいう。

(三) 福井県においては、正規に備品を購入しようとする場合には、財務規則二三条により執行伺及び支出負担行為伺を起案し決裁を受けることが、備品の購入代金の支出においては、財務規則六六条により支出命令決議書を起案し決裁を受けることがそれぞれ必要であり、更に、財務規則二三七条の二により、右支出負担行為伺及び支出命令決議書に基づき、「公文書」である備品台帳が作成される。しかし、「不適切な事務処理方法により取得した備品」は、右財務規則に規定する執行伺、支出負担行為伺及び支出命令決議書の起案、決裁の手続を経たものではないことから、備品台帳に記載されるべきものではない。

しかしながら、取得手続が不適切な備品であっても、公務遂行の用に供されている以上、県の財産として管理する必要があるため、本件文書を作成して管理しているものである。

したがって、本件文書は、文書規程第三章の各規定に基づいて起案したものではなく、また、文書規定二四条、事務決裁規程二条及び三条に基づく「決裁」の手続を経た文書でもない。さらに、文書規程第五章の各条文に基づく保管、保存も行っていないから、本件文書は条例二条一項の「公文書」には当たらない。

第三争点に対する判断

一  争点1(本件回答は行政事件訴訟法三条二項の「処分」に該当するか)について

条例により、福井県の住民等(以下「住民等」という。)は、条例二条一項に定める「公文書」、すなわち「実施機関の職員が職務上作成または取得をした文書、図画及び写真(これらを撮影したマイクロフィルムを含む。)であって、決裁または供覧の手続終了後、県において管理されている」文書の公開を請求する権利を有する。そして、「公文書」について公開請求があった場合、実施機関は、条例九条一項により、当該「公文書」の公開の可否の決定をしなければならない。

条例九条一項は、「公文書」の公開請求を受けたときは、その許否の態度を明示すべきことを実施機関に義務付けた規定であって、その場合、公開請求に係る文書の存否や当該文書が「公文書」に該当するか否かは、公開又は非公開の決定に当たり、その前提として判断すべき事項であるから、条例は、実施機関に対し、住民等に対して公開請求に係る文書の存否や当該文書が「公文書」に該当するか否かについての判断を示すべきことを当然に予定しているものと解される。

そして、本件回答は、「請求にかかる公文書は存在しない」との理由で本件文書の公開の可否を決定できないとの通知をしたものであるが、その趣旨は、本件文書が「公文書」に当たらないとの判断を示したものであることは、本件において被告の自認するところである。そうであれば、本件回答は、本件文書が「公文書」に該当しないことを前提にして、原告が条例に基づいて本件文書の公開を受ける権利はないと判断したものに等しく、原告に対して本件文書の公開を受けることができなくなるという不利益を一方的に与えたもので、しかも、これは行政庁である被告が、行政組織からみて外部である原告に対して行った行為であるから、本件回答は行政処分たる非公開処分に該当すると解するのが相当である。

また、実質的にみても、被告主張のように、本件回答が単なる事実行為であって非公開処分に当たらないとすると、「公文書」に該当するか否かの判断はひとり実施機関にのみ委ねられることになって、これに対する司法審査の途は閉ざされ、ひいてはこれが濫用される可能性を否定できないのであり、住民の知る権利を具体的に保障するために制定された条例の趣旨を没却するおそれがあるといわなければならない。

したがって、本件訴えは適法である。

二  争点2(本件文書は条例二条一項の「公文書」に該当するか)について

1  条例二条一項は、公開の対象となる「公文書」について、「実施機関の職員が職務上作成または取得をした文書、図画及び写真(これらを撮影したマイクロフィルムを含む。)であって、決裁または供覧の手続終了後、県において管理されているものをいう。」と定義している。

したがって、本件文書が「公文書」といえるためには、「実施機関の職員が職務上作成または取得をした」こと、「決裁または供覧の手続終了後」であること、及び「県において管理されているもの」であること、の各要件を満たす必要がある。

2  そこで、まず、「職務上作成または取得をした」との要件について検討する。

「職務上作成または取得をした」とは、実施機関の職員が自己の職務の範囲内において作成し又は取得した場合をいい、法令上当該文書の作成又は取得の権限を有するか否かや、文書規程に基づいて作成又は取得したか否かは問わないと解するべきである。

この点について、福井県総務部文書学事課情報公開室の作成した「公文書公開事務の手引」(乙1)には、右要件に関し、「実施機関の権限に属する事務の執行に当たって、文書規程に基づき、起案または収受を行うことをいう。」と解説されているが、右手引は福井県による条例の解釈運用基準として策定されたものにすぎず、条例上の要件である「職務上作成または取得をした」との要件に右のような「文書規程に基づき」という限定を付する合理的根拠は見い出し難い(もっとも、後述のとおり、「公文書」といえるためには、「決裁または供覧の手続終了後」の要件を満たすことが必要であり、「決裁」の対象となる文書は文書規程にいう「起案文書」(二四条)、「供覧」の対象となる文書は「収受した文書であって起案による処理を要しないもの」(三一条)であるから、これらの文書を実施機関の職員が自己の職務の範囲内において作成し又は取得した場合とは、事務の実際からすると、大半は、実施機関の権限に属する事務の執行に当たって、文書規程に基づき、起案または収受した場合をいうことになると解されるが、これはあくまで「決裁または供覧の手続終了後」の要件の問題である。)。

3  次に、「決裁または供覧の手続終了後」との要件について検討するに、右要件を満たすためには、当該文書が少なくとも「決裁」又は「供覧」の手続を予定された文書であることが必要と解される。

ところで、行政事務の手続上、「決裁」とは、通常、上司あるいは決裁権者の承認を受けることを指すから、「決裁」の手続が予定されている文書とは、行政事務上の上司あるいは決裁権者の承認を受ける目的で作成された文書をいうものと解される。

そして、福井県では、文書規程において、「決裁」の対象とされる文書は「起案文書」とされ(二四条)、「起案文書」とは「事案の決定案を記載した文書」と定義されている(二条三号)から、「決裁」の対象とされる文書は、事実上、事案に対する決定案、すなわち県としての意思を決定するための基礎となる案文に限られる。なお、文書規程において、「供覧」の対象とされる文書は、「収受した文書であって起案による処理を要しないもの」とされ(三一条)、「収受」の対象とされる文書は、外部から福井県に到達した文書である(一〇条ないし一五条)が、本件文書は、福井県の職員が作成したものであるから、「供覧」の対象となる文書とはいえないことは明らかである。

4  また、「県において管理されているもの」との要件について検討するに、右要件は、実施機関が公文書の公開請求を受けたときは速やかにこれに対応しなければならず(条例九条)、実施機関が当該公文書を直接の支配下に置いている場合でなければ、直ちに右の要請に応じることが困難であることから規定されたものと解されるから、右にいう「県において管理されているもの」とは、現実に実施機関において文書規程等に基づいてその支配下に管理しているものをいうと解するべきであり、管理権限の所在する者が管理しているか否かは問わないというべきである。

5  本件文書についてこれをみるに、福井県においては、正規に備品を購入しようとする場合には、財務規則二三条により執行伺及び支出負担行為伺を起案し決裁を受けること、また、備品の購入代金の支出においては、財務規則六六条により支出命令決議書を起案し決裁を受けることがそれぞれ必要であり、更に、購入した備品については、財務規則二三七条の二により、支出負担行為伺及び支出命令決議書等に基づき、中分類、小分類、品目、規格、年月日、出納の種類(購入、寄付、保管転換、売払、廃棄等)、番号、受(数量、単価、価格)、払(数量、単価、価格)、差引現在高(数量、単価、価格)、内訳等を記載した備品台帳を作成しなければならず、右備品台帳は、条例二条一項の「公文書」に該当することが認められる。

右財務規則二三七条の二の規定に照らすと、福井県においては、備品を購入する場合は、常に備品台帳の作成が要求されるものと解されるから、これに先立つ備品購入の手続として執行伺、支出負担行為伺及び支出命令決議書の各起案及び決裁がされる必要があることはもちろんであるが、この手続がされなかったからといって、備品台帳の作成が免除されているとは解されない。

そうすると、「不適切な事務処理方法により取得した備品」についても、本来、備品台帳が作成されなければならず、右備品について備品台帳の作成がされなかったことは財務規則二三七条の二の規定に違反するものであり、このような違法な手続がされた理由は、結局、旅費支出を備品購入に充てたこと、すなわち備品購入のための支出でないものを備品購入に充てたことによるというほかない。

そして、「不適切な事務処理方法により取得した備品」であっても、福井県の公務遂行の用に供され、県の財産として管理されていることは被告の自認するところであり、本件文書は、かかる備品につき、各所属においてその存在を管理するために作成され、一連の番号、品名等及び数量が記載されていることは前記のとおりである。

しかも、本件文書は知事部局の各所属において作成されたものであることは当事者間に争いがないから、本件文書は県職員が自己の職務の範囲内において備品管理のために作成したものと推認することができ、「職務上作成または取得をした」の要件を満たす。

そうであれば、本件文書は、その記載内容に照らしても、また、実際の機能に照らしても、備品台帳に準じ、これと同一の機能を果たすべきものとして作成されたものと認められ、備品台帳が「公文書」に該当し「決裁」の対象となる文書である以上、本件文書もまた「決裁」の対象となるべき文書と解するのが相当である。

そして、本件文書について、実際に「決裁」の手続が行われたとは認められないが、「決裁」の対象となる文書に対して現実に「決裁」が行われないかぎり、当該文書は「決裁の手続終了後」との要件を満たさないと解すると、実施機関としては、「決裁」を懈怠することにより、常に「決裁の手続終了後」との要件が満たされていないとして公文書の公開をしないことができることになるが、右のような解釈は、条例により公文書公開請求権者に認められた公文書公開請求権の意義を没却するものであって不当であるから、「決裁」の対象となるべき文書が作成された後、相当期間が経過した場合は、「決裁の手続終了後」との要件を満たすと解するべきである。

そうすると、「不適切な事務処理方法により取得した備品」は平成六年度から平成九年度の予算で購入されたものであり、本件文書も遅くとも平成九年度には作成されていたと認められる(甲3、弁論の全趣旨)から、「決裁の手続終了後」との要件をも満たすものと認めるのが相当である。

また、文書規程は、各所属長において文書を保管、保存することを求めており(四五条ないし五六条)、右文書規程にいう文書とは、同規程九条各号に列挙されたものをいうが、「起案文書」(二条三号)として「決裁」の対象となる文書はすべて右にいう文書と解される。

そうすると、本件文書は、前記のとおり、「決裁」の対象となる文書と解されるから、「起案文書」であり、文書規程により各所属長において保管、保存されるべき文書であるといえ、現実にも各所属において管理されていることは争いがないから、「県において管理されているもの」との要件も満たすものと解するのが相当である。

三  結論

以上のとおり、本件文書は条例二条一項にいう「公文書」の要件を充足し、これを非公開とすべき理由は何らうかがわれないから、本件回答は公開請求に対する非公開の処分として違法である。

よって、原告の請求は理由がある。

(裁判長裁判官 小原卓雄 裁判官 酒井康夫 裁判官 岩崎邦生)

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